ドラムおやじのぼやき 27

ある春の日の夜9時頃。

私は、残業中の夜食を買い出しにコンビニにやって来た。

晴れ渡った夜空には下限の月が浮かび、柔らかな月明かりを

さらさらと下界に注いでいる。風もなくとても心地よい夜だ。

『こんないい夜に残業とは恨めしい…』

納期に間に合わせるため、もうひと踏ん張りしなければならない我が使命を恨んだ。

コンビニの隣には小さな神社があった。

祠の周りに植えられた桜の木はこぼれんばかりに花を付けており、

それらが、コンビニからもれる照明に照らされ、

花びらの淡いピンク色が夜闇に幻想的に浮かび上がる。

『あ〜もう仕事なんか投げ出して、ビール片手に夜桜見物でもしたいな〜』

ついついぼやいてしまう… その時だった!

『そこのお方』

(?!) 若い女性に呼び止められた気がした。
(気のせいでしょ…)

『もし、そこのお方!』

(え! 気のせいじゃない?)

振り返ると、淡いピンク色の霞の中に若い女性が立っていた。

その出で立ちは、昔話の登場人物の様に、淡いピンクの地に桜の花びら模様の着物、

腰まで届く程の、烏の濡れ羽色の艶やかな黒髪。

(夢か幻か?! 和風バーのチイママか? 宗教団体の勧誘か?)

『よろしければご一緒しませんか? 夜桜見物を』

彼女は、しなやかな手つきで神社の桜を指差した。

桜の木の下で宴会でもやっているのかと指差された方を見たのだが、そこには桜の木があるだけだった。

『え? どうゆことですか?』

『よくご覧ください。桜の花を』

私は、わけも分からず、桜の木に近づき花をじっと見た。

すると、なんと花だと思っていたものは、小さな神様?達が沢山集まって宴会をしているところであった!

彼らは御馳走を並べ、笛や太鼓を鳴らし、踊り、とても楽しそうに大騒ぎをしている!

耳を澄ますと、『ぴーひゃら どんとと よっほらほーい』と聞こえてきた。

(”さくら”の語源は”神の座するところ”だと聞いた事があるが、本当だったんだ…

いや! 俺は何を言っているんだ! これは幻想だ、俺は疲れているんだ! ばかばかしい!)

『いいえ、幻想ではありませんわ! さああなた様もご一緒いたしましょ!』

『いえいえ、私にはまだやらなければならない仕事があるのです!』

『仕事ならいつでもやれるではありませんか。でもこの出会いは今夜限りですよ。

仕事のための人生などつまりませぬ! 人生は楽しまなければ。仕事などどうにかなりますわ!

あなた様はもう十分働きました。さあ! いらっしゃい!』

その時の私は、疲れていたのか、それとも彼女のまやかしに翻弄されてしまったのか、

『そ、そうですね…まあいっか! じゃ僕も宴会に参加させてくださ〜い!』

と、ついに一歩踏み出してしまった!

その刹那、ふっと現実に戻った。

現実に戻った私は、コンビニの袋を手に持ってドアの外に立っていた。

袋の中身は、季節限定桜風味のケーキとプリン、プレミアムモルツ500mL。

いつの間にか風も出てきていて、神社の桜の花びらがざわざわっと風に舞い、夜闇に消えていった。

(もう桜も終わりなんだな… さよなら桜の精さん。

もう今日は帰って、ケーキをつまみにビール飲んで寝よ。仕事なんかなんとかなるさ!よっほらほーい)

このように、私の地元では、今なお”もののけ”が人間をたぶらかす事があります。

ですから、ですから取引先の皆様!

弊社がたまに、ごくたまに、ごくごくたまに納期遅れをおこすことがあっても、

それは誠意や技術や根性ややる気が無い訳ではございません!

それは”もののけ”の仕業なのです!

ですから、納期遅れの際には、何卒、何卒ご寛大なご対処をお願い申し上げます!

何卒!

ドラムおやじのぼやき 27” に対して2件のコメントがあります。

  1. saki@cl より:

    久しぶりのぼやき!待ってましたー笑

  2. takumi@dr より:

    saki@clちゃん、ありがとう!

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